2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

序章 あるいは回収できなかった手紙について

たった500回同じ電車に乗ったあなたと同じになるためだけに乗った赤色の鈍行後ろ姿と白いふくらはぎしか知らなかったあなたは朝の風景だったし、手紙を渡したのは冷たい灰色の壁の前であなたの肌と黒い髪とセーラー服と赤いマフラーしかない色彩の場所であな…

的中祈願隊

パドックへ向かう途中、有人窓口の前に若い女が立っているのが見えた。的中祈願隊というふざけたメンバーの一人だ。馬券を買うと「当たりますように」と手を握ってくれる。まるで地下アイドルの握手会のようなものだ。僕のように独り者にはオアシスのような…

20180818

東京、といっても僕はその外れに住んでいるので、自分が東京人とは03で始まる市外局番以外に意識したことはないのだが、ふとした瞬間にここは東京なのだと気付かされることがある。 庭に羽根が落ちていた。 故郷では羽根を見つけることはそれほど珍しいこと…

断章四

異国の地で迷った。店の前に立っていた二十歳ぐらいの女性に声をかけた。慣れない北京語で駅はどこか訪ねた。女は笑顔で答えてくれた。けれども聞き取れなかった。女はやっぱり笑ったままで信号を指差し、手振り身振りで教えてくれた。でもわからなかった。…