2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

断章十五

翼 幾度も渡った跨線橋が師走だけは少しだけ華やいで見えたのは気のせいだったか。東京で一番地味なターミナル駅には谷中墓地の精霊たちが住んでいる。そんな当たり前のことを知らずにいた。雪が降ればいいのにと思った。でも東京に雪はふらない。 列車の扉…

断章十四

三島由紀夫の「翼」を読んだのは高校入試前の模擬試験問題だっただろうか。通学途中の電車で背中合わせで立つ高校生の男女が、お互いの背中に翼があることを予感しながら振り返ったら慕いあっていたいとこ同士で、という内容だったと思う。短編だったのに、…