断章十六(ノンフィクション)
平井堅の「ノンフィクション」を聴くと泣きたくなる。正確には平井堅の歌声を聴いているわけではない。Youtuberの女の子が歌っているのを聴くと泣きたくなるのだ。
人生は苦痛ですか?
成功が全てですか?
思えばずっとそんな感覚で生き続けてきたような気がする。人生は成功するものだと思っていて、そのくせ成功なんて全然イメージできなくて。大学入学直後、学生寮の4階から知らない土地の灰色の空を眺めながら、人並みの幸せが得られればいいなと考えた頃から、僕の敗北ははじまっていたのかもしれない。
人生は悲劇ですか?
成功は孤独ですか?
どこかで僕は幸せにならなきゃと思いながら、幸せになることを恐れていたのかもしれない。多分幸せになんかなれないと思い込んでいる自分にずっと気づいていた。一方、あなたと出会えた幸福にすら、ずっと気づけずにいたのだ。
惰性で見てたテレビ消すみたいに
生きることを時々やめたくなる
そろそろ僕は負けを認めなきゃいけない頃合いだろう。情けない自分の存在を認めてやる頃合いだろう。僕は結局なにも手に入れていないし、なにかができるようにもならなかった。英語だって、中国語だって、もしかすると日本語だって、あなたにたった一つのことすら伝えられなかった日本語も、僕は使えるようになれなかったのかもしれない。
みすぼらしくていいから
欲まみれでいいから
ずっと僕はなにになりたいのかわからなかった。小説家だろうか、政治家だろうか、芸術家だろうか、賭博師だろうか、いずれでもなかった。僕は詩人になりたかったのかもしれない。ずっと知らなかった。そんなものは四季報にもハローワークにも載っていなかった。気づくのが遅かったかもしれない。詩人になるためにはもう残された人生は少なすぎるかもしれない。でもこれからは詩人として生きていこうと思いはじめている。だれかの心、まず自分の心からかもしれないけれども、動かせるような言葉を紡いでみたい。
正しくなくていいから
くだらなくていいから
もちろん、またなにが詩なのかすらわからずにいる。そこからはじめてみようと思う。