断章四

異国の地で迷った。店の前に立っていた二十歳ぐらいの女性に声をかけた。慣れない北京語で駅はどこか訪ねた。女は笑顔で答えてくれた。けれども聞き取れなかった。女はやっぱり笑ったままで信号を指差し、手振り身振りで教えてくれた。でもわからなかった。
初めて行ったバンコクでホアラルンプール駅の場所がわからず、いろいろな人に訪ねたが、「ホアラルンプール」というその言葉ですら相手に伝わらなかった。恐怖だった。
でも台湾で、台中で受けた印象はどうだったろうか。女は美人ではなかったがいいお嫁さんになれそうないい娘だった。伝わらないというのはなんて素敵なんだろう。女はバイバイと,、最後にバイバイと言った。僕もバイバイと言って別れた。