20200817

 暑い。若い頃バンコクで感じた暑さは異常だと思ったが、今の暑さはその比ではない。真夏の台北、店先で冷気に当たるために犬が寝そべっているのを見て、僕は暑い国ばかり旅しているなあと思っていたが、結局住んでいる国が暑くなってしまった。
 実を言うと僕はなにかを書きたいという気分ではないのだが、そんなときほど何かを書くべきなんじゃないかと思い始めている。この抑圧感はなんだろう。胸をずっと押されている感じは、もしかしたら流行の伝染病に侵されているのかもしれないが、むしろ生きつづけていることで感じているうっすらとした恐怖感、怯えなんだろう。
 気がついたらタクシーが変に丸っこくなって丸っこいエンブレムを付け始めていたが、あああれは東京オリンピックのエンブレムだったかと気づいた。第1京浜の交差点に立って、本当は東京ではオリンピックをやるはずだったんだという嘘みたいな冗談を思い出して、面白い時代に生きるのも楽じゃないと思った。歴史に残るような事件なんてろくなことはない。